今回の劇評コンペの審査に参加して、私がこのコンペには意味があると思ったのは、大筋において応募劇評の質が後半に行くにしたがって徐々に向上していっていると思えたからである。これは応募者がすでにUPされた原稿を読み、それを意識しながら書いたからではないかと私は想像した。あるいは、複数回応募した人は自分の前の原稿をも批評の対象にしたのではないかと私はしばしば思ったのであった。劇評は舞台芸術に対する批評であるが、それと同時に、その批評の質を上げるのは、イリヤ・カバコフが「作家は自分の作品を二度見る」の中で書いたように、自らの批評に対する自己批評性を獲得するかどうかにもあるのだと私は思う。