文・小山ひとみ

多様性、自分勝手、迷い、エネルギッシュ、衝動的、恐れない、遠慮せず発言と行動、テクノロジー、クリエイティビティー、夢追い、孤独、疑い、依頼、理想、矛盾、自由、規則に縛られない、個性的、自立、尊重、ポストインターネット、焦燥、浮遊感、打ち壊したいという欲望、個人主義、未来、空虚、喪失

 これは、私が日頃付き合いのある北京や上海、東京など都市部で生活をする中国ミレニアル世代17名(今回、招聘しているゲスト数名も含む)に「自分たちの世代を形容してみて」という質問を投げかけた結果です。中には「形容できない」と回答をしたミレニアルズも数名いました。前向きな回答と後ろ向きな回答。それは、どの世代にも必ずあるものですよね。でも、1996年から約20年間、中国や中国人と繋がりを持ってきた私は、「中国のミレニアル世代は、上の世代と何かが違う」という違和感をずっと持ち続けてきたんです。その違和感は一体何なのか、私自身、もっと知りたいと思いました。

 2年前、2017年のアジアシリーズは「中国」と決まった時、「中国ミレニアル世代」をテーマにプログラムを組みたいと思いました。それは、その「違和感」を皆さんと共有したいと思ったからです。「違和感」と書きましたけど、ここではマイナスの意味ではありません。とても前向きで、希望を感じる違和感。その違和感は、もしかしたら、これから日本と中国で一緒に歩んでいける「何か」に繋がるかもしれない、そういう「何か」を探したいと思ったんです。

『恋 の 骨 折 り 損 ―空愛①場― 』『忉利天(とうりてん)』『秋音之夜』『トーク:写真、ユースカルチャー、ファッション、音楽』

アジアシリーズ vol.4 中国特集 会場:スーパー・デラックス、あうるすぽっと 


 ミレニアル世代とは「1980年から2000年までに生まれた世代」と言われています。中国でいえば、1976年に文化大革命が終焉し、1978年に改革開放、ちょうどそれ以降に生まれた世代に該当します。文化大革命という閉ざされた約10年間を経験していない世代です。「なかったものが、急に手に入るようになった」と、あるミレニアル世代の友人が自分の子どもの頃を振り返って語ってくれたのを覚えています。それは、子どもの頃、経済の自由化により、外のモノが徐々に入ってくることで、気が付いたらネットで見ていた憧れのモノなどが簡単に手に入るようになっていたという、瞬時の変化を語ってくれたのです。

 そんな中国のミレニアル世代は、一人っ子政策の世代でもあります。両親、そして、4人の祖父母から愛情を注がれ、お金や精神面でのバックアップを全面に受け、大切に育てられた世代。なので、一概に「ワガママ世代」と形容されがちです。でも、身近なミレニアル世代の友人たちと接していて、「そうでもないのでは?」と感じます。私は、生まれた時から競争の中におかれ、自分から手を挙げていかなければなかなか芽が出ない自立世代でもあるとみています。だから、外のモノをどんどん吸収して、他人にはできない何かを見つけ、「化学反応」をみたいと意欲的。また、経済成長を肌身に感じている世代でもあるので、依然として国には頼れないけれど、自分たちでどうにかしたいと、とにかく積極的なんです。ネットで情報を得て、それを実際に体験、経験したい。だから、留学して、学んだものを自分なりに味付けをして、中国に持ち帰り起業する、自分の仕事に活かす、そういうミレニアル世代もどんどん増えています。

チェン・ティエンジュオ(陈 天灼)

1985年北京生まれ。現在は北京を拠点に、ダンサーやミュージシャン、フランスのアートグループなどとのジャンルを超えた協働作業を続ける。アジアシリーズ vol.4 中国特集 『忉利天(とうりてん)』

 でも、ミレニアル世代のなかには、経済面で親に頼り、別の手段がないから、親や社会のいうままに生きざるを得ない、複雑なミレニアルズが存在するのも確かです。また、「伝統と現在の狭間で迷っている世代」でもあります。例えば、「親(の伝統的な価値観)と自分(の価値観)」。子どもの幸せを願う親というのは、万国共通。でも、中国には、「子どもの人生=私の人生、孫の人生=私の人生」と考えている親や上の世代が少なくないようです。ミレニアル世代は、親が若いころに経験をしていること以上に選択肢や様々な誘惑が増えたことによって、結婚は二の次になりがちです。ですので、中国もここ数年、晩婚になっているといいます。でも、親からしたら、20代の早めに結婚をして、子どもを持つのが当然と考えています。このように、子どもの恋愛、結婚に口を出してくる親を持つミレニアル世代も存在するのです。親の主観で人生が決められてしまいがちなミレニアル世代とその親の関係は、日本以上に複雑なんですよね……。などなど、中国のミレニアル世代は、歴史的角度からみても、私たちが想像する以上に、上の世代とはかなりの違いがあるといえます。

スン・シャオシン(孫 暁星)

1986年生まれ。中国の小劇場やインディペンデント劇団などを紹介した著書『Re-Theatreインディペンデント演劇の都市地図』を執筆。2015年劇団en?(这是怎么回事?怎么变这样?)を旗揚げ。2016年『サイバー劇場計画』を発表。アジアシリーズ vol.4 中国特集 『恋 の 骨 折 り 損 ―空愛①場― 』

 ただ、ここで紹介したのは、あくまでも、私自身が独自にミレニアル世代を取材したり、今回、招聘しているアーティスト、演出家、ミュージシャン、ファッション・ディレクターたちと接したり、中国のテレビ番組やネットの情報を見たりして感じたことであることをご理解いただければと思います。

 いつも思うのは、「中国」というのは当然だけれど、一言では語れないということです。広い土地、人口の多さ、生活や教育レベルの差異など、そこには私たちが想像できない以上の「違い」が存在しています。「中国ミレニアル世代」もしかりです。それでも、まだまだ可能性に溢れた中国だからこそ、中国ミレニアル世代にはどこか期待をしてしまうんですよね。きっと「何か」を見せてくれるんじゃないか、きっと「何か」を提示してくれるんじゃないかって。今回の中国特集から、その「何か」が見つかれば、きっと未来は明るいのでは?と大袈裟に考えながらも、その「何か」を見つけて、次に繋げられたらと結構本気で思っています!皆さんも、是非、会場でその「何か」を見つけてみて下さい!

そんな中国のミレニアル世代が愛してやまない音楽に関するネット番組、キーパーソンを動画で紹介!(独断と偏見であること、ご了承下さいね!)

2017年、ミレニアル世代にとって「hip-hop」は欠かせない存在に!

ミレニアル世代の間でとにかく話題に上がったネット番組といえば、hip-hopのバトル番組『中国有嘻哈』(「中国にhip-hopあり」という意味)だ。この番組、今年の6月に放送がスタートし、9月に決勝戦を迎えたという三ヶ月の番組。オリジナルの楽曲を披露し、勝ち抜いていくというバトル形式。うまく「韻をふんでいるか」も勝つためのポイントになっている。決勝戦では、GAIとPG Oneという二人のラッパーが戦った。結局、ダブル優勝という結果に。

hip-hop界のアイドル?

ミレニアル世代の女子に大人気の歌手、王嘉児(ワン・ジャーアー)は、ラッパーとしてJackson Wang(ジャクソン・ワン)の名前でも活躍中。多国籍なメンバーで結成されたアイドルグループGOT7でもhip-hop担当。クールなマスクとは裏腹に、愛嬌があってお笑い担当的なお茶目な人気アイドル。元フェンシング選手という意外なバックグラウンドも。

→「中国では、hip-hopの他にどんな音楽が流行っているの?」「ミレニアルズの音楽家ってどんな人がいるの?」中国の音楽事情、ミレニアルズの音楽家のことがもっと知りたいと思ったあなた!こちらがオススメです!

アジアシリーズ vol.4 中国特集

『トーク:写真、ユースカルチャー、ファッション、音楽』 「ミレニアルズの音楽家 −彼らは世界に何をもたらすのか?」スピーカー:シェン・リーホイ

11/4(土)13:30 会場:スーパーデラックス


フェスティバル/トーキョー17主催プログラム
アジアシリーズ vol.4 中国特集 チャイナ・ニューパワー

『秋音之夜』
出演:リー・ダイグオ、シャオ・イエンペン、ワン・モン、ノヴァハート

日本初上陸の若手実力派ミュージシャンが集う贅沢な一夜

日本ではなかなか紹介されることのない、中国ミレニアル世代のミュージシャンを一堂に集めた音楽イベント。伝統楽器の琵琶、二胡の傍ら、ウッドベースやチェロ、口琴までも自在に演奏するリー・ダイグオ、VJワン・モンの映像とともに五感を刺激する空間をつくりあげるエレクトロニック・ミュージシャン、シャオ・イェンペンのほか、エレクトロ・ポップ・バンド、Nova Heartが参加し、アコースティック、エレクトロニック、バンドサウンドと、テイストの異なる、新世代の音の競演を繰り広げる。。

日程 11月3日(金・祝)、11月4日(土)
会場  スーパー・デラックス 詳細・チケット


『チャイナ・ニューパワー — 中国ミレニアル世代 —』 トーク:写真、ユースカルチャー、ファッション、音楽

各分野の先駆者が自ら語る中国ミレニアルズとその近未来

日本のメディアがほとんど取り上げない、中国の今後を牽引するミレニアルズの実態をトークからも読み解く。「写真」「ユースカルチャー」「音楽」「ファッション」の4つのテーマのもと、今の中国のカルチャーシーン、ミレニアルズの動向をそれぞれのプロフェッショナルに聞く。

■「中国写真の世界 −ミレニアルズの写真家と自費出版の現状−」

日程:10/28(土)18:00 スピーカー:イエン・ヨウ You Yan(言 由)

詳細・申し込み 

 

■「インディビジュアライゼーション:チャイナ・ユースカルチャーの流れ」

日程:10/29(日)13:30 スピーカー:チャン・アンディン Zafka Zhang(張 安定)

詳細・申し込み 

 

■「ミレニアルズの音楽家 −彼らは世界に何をもたらすのか?」

日程:11/4(土)13:30 スピーカー:シェン・リーホイ Lihui Shen(沈 黎暉)

詳細・申し込み 

 

■「中国ファッション界とミレニアルズのデザイナーの現状 −彼らの想いとは?−」

日程:11/11(土) 14:00  スピーカー:リュウ・シンシャー Tasha Liu(劉 馨遐)

詳細・申し込み 

 



『忉利天(とうりてん)』 構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ

古代神×クラブミュージック。熱狂と混沌の中に立ち上がる「いま」

彫刻や絵画といったファインアートから、グラフィックやファッションのデザインまで、縦横無尽にジャンルを行き来し、東西の多様な文化をミックスアップ、サイケデリックかつポップな作品に昇華するチェン・ティエンジュオ。英国留学を経て、ヨーロッパのレイブ、クラブシーンにも精通する彼が、これまでに発表してきたライブ・パフォーマンスを、劇場作品としてリ・クリエーションする。神々が跋扈する古代の世界と現代のクラブ・カルチャーとが邂逅し、出現させるまたとない空間に身をまかせよ!

日程:11/10 (金)、11/11 (土)

会場 あうるすぽっと 詳細・チケット


『恋 の 骨 折 り 損 ―空愛①場― 』 作・演出:スン・シャオシン

虚無と現実が交錯する夢の時間=「堕落部屋」からの実況中継

インターネットやポップカルチャーに耽溺する若者たちを描いた、中国小劇場演劇の最新形。禁欲の誓いを立てた青年たちが美しい貴婦人らに翻弄されるシェイクスピア戯曲と同名の本作。その舞台はファンシーグッズで溢れかえる「堕落部屋」だ。携帯電話やパソコンのライブ配信を通じ、日々、目に見えぬ誰かと戯れる少女たち。その自堕落な暮らしは、混沌や荒廃を思わせるが、彼女たちにとっては、それこそがパステルカラーに彩られた夢の時間だ。観客など存在しないかのように、ただ流れていく時の中、舞台と客席、バーチャルとリアルの境界線がゆっくりと溶けていく−−。


日程 
10月28日(土)、10月29日(日)
会場  スーパー・デラックス 詳細・チケット


フェスティバル/トーキョー17 演劇×ダンス×美術×音楽…に出会う、国際舞台芸術祭

名称: フェスティバル/トーキョー17 Festival/Tokyo 2017
会期: 平成29年(2017年)9月30日(土)~11月12日(日)44日間
会場: 東京芸術劇場、あうるすぽっと、PARADISE AIRほか

舞台芸術の魅力を多角的に提示する国内最大級の国際舞台芸術祭。第10回となるF/T17は、「新しい人 広い場所へ」をテーマとし、国内外から集結する同時代の優れた舞台作品の上演を軸に、各作品に関連したトーク、映画上映などのプログラムを展開します。 日本の舞台芸術シーンを牽引する演出家たちによる新作公演や、国境を越えたパートナーシップに基づく共同製作作品の上演、さらに引き続き東日本大震災の経験を経て生みだされた表現にも目を向けていきます。

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