フェスティバルに参加するアーティストからの選書をご紹介する「F/T Books」。
本を通じて、フェスティバルの作品世界や舞台芸術に足を踏み入れることのできる企画です。 今年は「からだの速度で」または「作家として影響を受けた本、今回のクリエイションで影響を受けた本」というテーマで選んでいただきました。
観劇前に、観劇後に、アーティストにとっての表現の燃料や、世界の切り取り方をのぞいてみませんか?きっと、観劇がより楽しいものになるはずです。
個人も社会も世界もフィクションと事実のあいだにあるような気にさせてもらえます。
芸術や速度[という概念]もきっとそう。
僕らが判り得る範囲は極小で、あとは想像力で補っていて、その断片は世界に満ちている。
9784255008516/朝日出版社/本体1,560円+税
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雪が降っている風景を眺めているうちに、雪が降っているのではなく、自分や世界が上昇している感覚に陥るシーンがあるのですが、自分と世界との関係の距離感とか角度とか速度とかが、バグを起こし て再構築する感覚みたいなものが、凄く舞台美術的だなと思っています。
9784122018594/中央公論新社/本体540円+税
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この本を読んでる最中は広大な海に浮かんだ船の上で老人として、時には彼の背後霊として私は存在していた。
本をズボンのポケットに閉まって歩いているとき、ポケットの中に海を閉まっているように感じ、本を開けばそこには海がひろがっている確信もある。
広大な景色を持ち歩ける感覚とはこういうものなのかなあと思った。
9784102100042/新潮社/本体430円+税
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この曲をすがるように聞く季節が2年に1度くらい来る。この曲だけをずっと摂取したいような、自分にとって点滴のような歌。
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上:9784582828986 下:9784582828993/平凡社/本体2,800円+税
9784150108694/早川書房/本体524円+税
9784822805968/七つ森書館/本体2,200円+税
NOWHERE OASIS は「場所」や「言語」「文化」といった規定された空間やカテゴリーの固定的なイメージのなかに、クレオール的なものの存在を認め、可視化させようとする試みと言えるかもしれません。
例えば、「東京」や「日本語」、「日本文化」というものたちのなかに...。
9784480087577/筑摩書房/本体1,400円+税
インドネシアという国を考える上で、避けては通れない1965年9月30日事件。
当時のことを知りたいと思ってたどり着いたのがこの本でした。
インドネシアを拠点にしてから、ライフワーク的に倉沢先生の著作を読み進めていて、 いまようやく『日本占領下のジャワ農村の変容』(草思社、1992年)を読んでます。
表層的になりかねない他国のイメージ、その背後にあるものがじわじわと迫ってきます。
9784000291286/岩波書店/本体524円+税
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精神科医の名医、神田橋條治先生の本。一見難しいけど、基本的には心と体の話。心と体を、ファントム(言葉による思考や思想→進化や暴走)と、動物としての人間(恒常、安定→保守)として対比している。ファントムのおかげで人は動物よりも進化したが、それ故、心と体のバランスがとれなくなり、暴走し滅びてしまう性質があるのだという。ファントムの暴走をおさえるには、じぶんのからだの声に耳を傾けることが大切で、芸術はその訓練になるという。この独自の骨太な論考を、神田橋先生は「童話」だと言い切っているのも面白い。Hand Saw Pressで月に1回開催している読書会で読んでとても印象に残っている本。「ひらけ!ガリ版印刷発信基地」でもこの本を課題に読書会を開く予定です。
9784753306015/岩崎学術出版社/本体1,500円+税
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Hand Saw Pressというリソグラフ&OPEN D.I.Y.スタジオを始めるきっかけは、事務所がある武蔵小山の近所で、食堂をやっていた小田さんがリソグラフの機械を持っていて、私がはじめてZINEを作った時に、そのリソグラフ機を借りた事がきっかけだった。Hand Saw Pressには、日々、いろんな人がやって来て、ZINEや本をつくっていくのだが、ZINEってなんでこんなに流行ってるの?いつからZINEって呼ぶようになったの?と素朴に疑問が湧いた時にパラパラとめくり、教科書のようにスタジオに置いている本。
9784416517673/誠文堂新光社/本体2,600円+税
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2017年に5年に一度ドイツのカッセルで開催される美術展「documenta 14」に訪れた。この年はアテネとの2都市開催で、ヨーロッパが抱える社会問題(民族、宗教、移民、難民、経済破綻)をテーマにした作品が連なり、日本の芸術祭との違いに衝撃を受けた。帰りにイスラエルのパレスチナの中にバンクシーが作ったホテルにも足を伸ばしてみたが、高い壁で覆われたパレスチナの中へ入り、壁の中へ押しやられているイスラムの人たちの深刻な状況を目の当たりにして、何も知らずに日本で暮らしているのが恥ずかしくなった。F/T開催地、豊島区は23区の中でも特に多く外国人が暮らしているし、私たちの会場がある大塚にはイスラムのモスクもある。イスラエルに行く前に買って読んだこの本は、イスラムの入門書としてとても分かりやすくおすすめです。
9784903908786/ミシマ社/本体1,600円+税
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19世紀ロシアに生まれたアナーキストで、地質学や生物学の研究者でもあったピョートル・クロポトキンが、自身の生涯を振り返って記した手記。身体をもって行動し続けた人の、膨大な行為と観察と思考の記録。彼の行為や、彼が周囲を巻き込んで引き起こす出来事は、どれも合理的な実践でありながら、この現実のみの中での合理性にとどまらないという意味で、美しく、創造的だ。
上:9784003421826/岩波書店/本体660円+税
下:9784003421833/岩波書店/本体700円+税
人間は3000年前まで意識(consciousness)=心の中にある空間、を持っていなかったという大胆な仮説を立て、意識の誕生についてメソポタミア遺跡や、ギリシア叙事詩、旧約聖書などを題材に多方面から検証している。どこまでこの論が「正しい」かはさておき、意識を意識する一つの取っかかりを与えてくれる。自分の身体や意識が、まだ発掘されていない遺跡や堆積物のように見えてくる。
9784314009782/紀伊国屋書店 /本体3,200円+税
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画家である宇佐美は、「心象」、「時間」、「幽霊」といったタームを中心に、宮沢賢治の『春と修羅・序』を、絵画などの様々な参照を交え読み解こうとする。著者はこれらのタームを(およそ我々が連想する平易なイメージを超え)、おそろしいスピードで受肉化するのだ。
ただし、この「おそろしいスピード」とは素早さのことではない。「速度の無さ」のおそろしさである。五連五八行あまりの賢治の詩篇に対し、差し込まれる多彩で多量のリファレンスと、これによって、やや脱線気味に引き出される関係性から「透明な存在」へと肉迫する。
9784788504738/新曜社/本体2,400円+税
「美味いうなぎとは、いわゆる良質うなぎを指すのである。」この一文で、私は大層愉快になりました。なにも説明できていないのに妙に力強い。だから、なにがホントウかわからなくて不安なとき、私は魯山人を思いだす。彼のエッセイに満ちる味覚へ信頼は、「認識の問題」とか「解釈の違い」とか「見方を変えれば」とかを吹き飛ばしてしまうのだ。社会がどんなに早くなっても、情報は私の空腹を満たしはしないし、私はきっと鰻を食べたい。食への執着は、情報化と過剰な相対主義への抵抗なのかもしれない。
9784122023468/中央公論新社/本体743円+税
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国際的にも活躍されている禅僧の藤田さんと、生き死にの場としての武、本当に生きて死ぬということを身体で深く追求する武術・武学研究家の光岡さんの対談。テクノロジーは進歩しても私たちの身体はむしろ身体の感覚は磨耗して鈍感になって身体そのものの力は衰えている。過去には今の私たちからは信じられない身体の智慧が生きていて同じ人間の身体とは思えないほど違いがある。進歩、進歩の現代で「退歩のススメ」とは!面白かった方には光岡さんの単著「身体の聲」もお勧めします。
9784794969835/晶文社/本体1,600円+税
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「人はなぜ学ぶのか。」「ともに学ぶということはどういうことなのか。」 全ての人にとって最も人間的な営みである学びについてを筆者の佐伯胖先生は「自分探しの旅」と定義します。「学ぶ」ということの意味についてを 深く、自分ごととして考えていけるおすすめの一冊です。
9784000039321/岩波書店/本体2,000円+税
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速さがまるで「正義」かのようにみなされるこんな世界で、いろんな速度/価値/在り方を許しあえる方向へ、いかなる揺さぶりをかければ、軌道修正がまだ間に合うのであろうか。
金貸しの父に養われた「罪業(カルマ)に前払い」されたような「矛盾の存在」を超えていこうと、「複合体としての自我」や「存在しつづける過去」や「幻想=説明のつかないもの」によって〈詩のかなたの詩〉を切実に探求したあの詩人の孤闘を辿った本書、そして「真木悠介」名義の「気流の鳴る音」や「時間の比較社会学」には、「視角のとり方(エピステーメー)」を転回する可能性が大いに示されている。
9784006020354/岩波書店/本体1,040円+税
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主人公は二匹のアシカ、コーヒーと煙草。二匹は擬人化されているけれど、ニンゲンもいる世界の片隅で、彼らを取り巻くアシカやウサギやカエルとの日々が描かれる。いや、二匹とは出会うこともなかった者たちや、アシカたちを夢の中で見た者やアシカの夢に現れた者も。それどころか、彼ら自体が誰かのパラレルワールドの姿であったり、劇中劇の登場人物だったり……かわいいキャラクターたちに油断させられると、疑ったこともないほど盤石だと信ずる自らの足場は危うくなり、読む者は自我までをも揺さぶられるに違いない。
上:9784253105187 下:9784253105194/秋田書店/本体1,100円+税
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「外科医の父と臨床心理士の母の元で育ち、夜尿症、多動症を抱え16歳から20歳まで引きこもっていた」という“乗っ取る”とか“刺す”とかに至ってしまった若者の紹介かと見紛うプロフィールの筆者が、初めて書いた戯曲を自ら小説化したもの。戯曲とラストが異なるのは、岩井の中には劇作家として確固たる評価を得た今でも、複数の「ありえた時間」が流れているからだと思う。「人生の正解」などではなく、自分とは異なる他者の痛みさえ感覚しうる、「間身体性」ともいえるほどの想像力をもたらす「フィクションの可能性」が、そこにはある。
9784309023045/河出書房新社/本体1,400円+税
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師匠の栗原彬さん(政治社会学)をわたしの現場である「カプカプ」に招いて対談したものが「すべての人が歓待されるホーム」というタイトルで収録されている。「ゴミコロレンジャー」に扮して京都のまちを清掃する「スウィング」、メンバーの幻聴や妄想を「かるた」にしてしまった東京の「ハーモニー」。福祉界隈では「問題行動」と呼ばれ、矯正の対象とすらなってしまうような行為を、「表現」だと異口同音に語るのは、その人の存在そのものを肯定したいと強く志向するからに違いない。そんな25か所の実践をまとめた。
9784761526306/学芸出版社/本体2,400円+税
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設計事務所を立ち上げたときに自然環境の調査を仕事にする友人に薦められて読んだ本です。その時は人が自然を破壊したことに対してそれを復活する大切さみたいなことで感動したような気がするのですが、25年ぶりに読んでみると、その場所に居続け、思考しながらも正しいと思う行為を続けることが大事なんだと、気づかされました。友人はそれが言いたかったのかな・・・。
9784751527603/あすなろ書房/本体1,000円+税
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F/Tの今年のテーマは「からだの速度で」。膨大な情報が超高速で行き交うなかで、からだの速度や時間を見つめなおすための本を選びました。
のろしや太鼓から始まって、通信・伝達を加速させ、すべてを情報化してきた技術の歴史。
9784105064112/新潮社/本体3,200円+税
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米国の事例を主とした歩くことの思想史。
9784865281385/左右社/本体4,500円+税
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3か月明けない極地の夜を犬1匹と歩き通した冒険家の記録は、パフォーマンスアートのセルフドキュメンテーションと言えるのでは。
9784163907987/文藝春秋/本体1,750円+税
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舞台において〈遅さの発見〉をした劇作家・演出家の思索。
9784906010592/五柳書院/本体2,000円+税
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翻訳がどうしても難しいけれど、からだ(感性)が捉える世界を分割・分配するのが政治、という定義がとても面白い。
9784588009310/法政大学出版局/本体2,200円+税
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20世紀以降の参加型アートの通史。他者(のからだ)をどう扱うかという点で、個人的にこれはない、という事例も含め考えさせてくれます。
9784845915750/フィルムアート社/本体4,200円+税
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去年からF/Tは「人と都市から始まる舞台芸術祭」を掲げています。
あたり前のことですが、都市は人でできています。ハードだけ整えても成立しません。
そこに暮らす人も、離れた場所から通う人も、旅行で一瞬だけ立ち寄る人も都市をつくる一部です。
そして人類の歴史をみても分かるように、人は時に集団を形成し移動を試みます。
ひとりよりもチームで乗り越えた方が結果につながることもあるでしょうし、
その集団の中では、さまざまな理想的なイメージが語られるでしょう。
同時代を生きている自分とは異なる環境のもとで暮らす人々のことを考えたり、
ちょっと先の未来を考えたり、F/Tのプログラムが想像力の糸口になればいいなと思っています。
ここでご紹介する本は、移動(変化)し続けることが大前提とした時に、
いかにウチとソト、似て非なる細かなジャンルをひとりではなく誰かと一緒に、
飛び越えられるのかを考えるための本です。
4910076110588/美術出版社/本体1,600円+税
4910045920798/プレジデント社/本体1,111円+税
9784845700776/リブロポート/本体2,200円+税