会場 | 池袋HUMAXシネマズ |
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日程 | 10/14(土)19:05 10/15(日)19:05 10/16(月)19:05 |
上演時間 | 225分(第一部30分、第二部60分、第三部120分 途中休憩15分あり) |
言語 | アラビア語上映/日本語、英語字幕 |
一般前売 | 一般前売・当日1800円、学生1500円ほか ※チケットは池袋HUMAXシネマズのみ取扱 |
先行割引 | ¥1,300 |
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学生 ※当日券共通。当日受付で要学生証提 | ¥1,500 |
高校生 | ¥1,500 |
中学生以下 | ¥1,000 |
手製の操り人形が再現する、十字軍遠征の血の歴史
アラブ世界の現実を、神話や空想を交えた芸術作品に昇華するワエル・シャウキー。エジプト出身の彼が、十字軍遠征の軌跡を「聖戦」とは異なる視点から描いたアミン・マアルーフの著書『アラブが見た十字軍』にインスパイアされ、製作した映像三部作(第一部『ホラー・ショー・ファイル』/第二部『カイロへの道』/第三部『聖地カルバラーの秘密』) を日本で初めて完全上映する。木や粘土、ヴェネツィアン・グラスでつくられた操り人形たちが、実際の戦跡を再現したセットで、古典アラビア語を用いて演じる歴史的事件の顛末。彼らの見せる表情、流す血の思わぬ生々しさが、私たちの歴史観に風穴を開ける−。
ムービー
- 第一部『ホラー・ショー・ファイル』
- 第二部『カイロへの道』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
フォトギャラリー
- 第一部『ホラー・ショー・ファイル』
- 第二部『カイロへの道』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
- 第三部『聖地カルバラーの秘密』
©Wael Shawky; Courtesy the Artist and Lisson Gallery
レビュー
“Puppet Master The wonderful world of Wael Shawky” by Sameer Rahim(『APOLLO』 2017年1月号より一部抜粋)
1099年、十字軍によってエルサレムが陥落してすぐのこと。ダマスカス人の裁判官アブー・サアド・アル=ハラウィがバクダッドの大寺院に到着し、パンを見せびらかしながら食べている。そのときはラマダンで、怒った民衆が集まってきてこう言う。「人が断食をしているときに食べるなんて、いったいどんな神経をしているんだ。」民衆の注目を浴びながら、アル=ハラウィは説教壇に登り、嘆きを歌った。「血と流れる涙が混ざり合い、同情の余地すらない…シリアの兄弟には、ラクダの鞍やハゲタカの胃袋を守れるような住居はもうない。」
中東の近頃の出来事を考えてみると、エジプト人映像作家ワエル・シャウキーの『十字軍芝居』にあるこのシーンは、恐ろしく響いてくる。シャウキーと会ったのは、二つの展覧会のために訪れていたトリノ。その時彼は、このシーンを考えていた頃シリアは平和だったと語気を強め、男らしい熱い口調で「本当に、何事も無かったんだ。」と語った。運命の恐ろしいいたずらか、『十字軍芝居』は主に、シリア紛争の主要な場所であるダマスカス、ホムス、アレッポで撮影された。その偶然に「奇妙すぎる」とシャウキーはうなずきながら言った。
物語を語る手法も、さらなる奇妙さを生み出している。リドリー・スコット監督作品『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)や、初期のカリフを描いたアラブで人気のテレビシリーズ『Omar』(2012)のように、中世の服装をした実際の役者を使うのではなく、『十字軍芝居』では、ローマ教皇ウルバヌス2世からサラーフッディーンに至るまで、手の込んだ人形が全ての重要人物たちを演じるのだ。また、彼の観点も独特である。西洋の年代記ではなく、アミン・マアルーフの著書『アラブが見た十字軍』で語られているイスラムの物語を用いているのだ。3つの映像と26体の操り人形は、トリノにあるリヴォリ城内の現代美術館に展示され、そこからは現地の修道士が使っている十字軍の道筋を見下ろすこともできる。5分か10分も美術館にいれば、きっと誰でも『十字軍芝居』に興味を持つが、その奥深さを理解するには、多角的に鑑賞する必要がある。シャウキーは、人々がハマりやすい作家なのだ。
ワエル・シャウキーは1971年にエジプトのアレクサンドリアで生まれた。幼少時代をメッカで過ごしており、彼の作品にはイスラムの美学が色濃く反映されている。1994年にアレクサンドリア大学で美術を学んだ後、美術学修士を取得するためフィラデルフィアへ移った。2011年にエルンスト・シェリング財団のアートアワードを受賞したことで、最も独創的な映像作家として認知されるようになった。
シャウキーは、操り人形を選んだ理由として、人形のほうが役者を使うよりも、かわいらしく繊細であるからだと語っている。「観客は操り人形に自己を見出すことができるし、投影することもできる。これがプロの役者ならば、たとえアル・パチーノが演じたとしても、そうはいかない。誰かが演じているものとして見てしまうから。」また、「優美さが求められる場面で、人間が操り人形に勝る事は不可能だ」と、ドイツ人劇作家ハインリヒ・フォン・クライストの1818年のエッセイ『マリオネット劇場について』からの引用にも触れた。
『十字軍芝居』の第一部である『ホラー・ショー・ファイル』(2010)では、トリノのルーピ・コレクションの地下室で朽ちかけていた120体の木製の操り人形を再利用した。ピストレット財団の助成を受けたことで、「衣装を変え、人形の内部を修理することができた」という。剥がれた塗装と欠けた顔は、物語のプロローグとなる541年のユスティニアヌスの疫病を想起させる。十字軍が開始される650年も前から物語を始めるのは奇妙なことに思えるが、シャウキーは長く歴史を見つめることを選んだ。疫病によりおそらく5000万もの人々が死亡し、その100年後にアラブ人がビザンティン帝国を征服。そして最終的にはキリスト教の再建が促されることになる。
次に製作された二作品は、第二部『カイロへの道』(2012)と、第三部『聖地カルバラーの秘密』(2015)である。これらの操り人形のデザインはシャウキーによるもので、前者は陶器、後者はベネツィアン・グラスでできている。年を追うごとに人形の姿は、シャウキーがニューヨークのメトロポリタン美術館で学んだアフリカの仮面に似て、自然的で動物的になっていく。戦争が続くにつれ、十字軍とアラブ兵たちはだんだんと脆く、透けはじめ、人間らしさが失われるのだ。シャウキーは30センチほどの高さの操り人形の隣に立ち、創作における挑戦について語ってくれた。最大の課題は「物語と正統な伝統工芸をどのように結びつけるのか」だという。彼はヴェネツィアのアドリアーノ・ベレンゴのスタジオでガラス製作のディレクションを担った。ヴェネツィアは物語のなかで重要な役割を果たしており、それは『聖地カルバラーの秘密』が、1204年にヴェネツィアのドージェ(旧ベネチア・ジェノバ共和国の総督)がコンスタンティノープルを占領したところで終わりを迎えるからだ。だからヴェネツィアは美と残酷さの源であると言える。
当初シャウキーは、『十字軍芝居』を世界的に広めるため、英語で作るべきだと考えていた。「あとになって私はこの考えが確実に間違っていると気づいた。アラビアの歴史を元にしているのだから、全て古典的なアラビア語で語られるべきだと。」皇帝や教皇といった全てのキャラクターがアラビア語を話すことによって、両者の境界を曖昧にすることができる。1095年、ローマ教皇のウルバヌス2世が十字軍の士気を高めるために教会で説教した際、「いまわしい民族」がキリスト教の地を支配していると痛烈に批判した。このことは、9・11の後にジョージ・W・ブッシュが自由のための「十字軍」と発言し、ウサマ・ビンラディンもまた、「いまわしい」西洋人が神聖なムスリムの土地を占領していると批難したことを想起させる。
三作品にはそれぞれ独自の視覚的特徴がある。『ホラー・ショー・ファイル』における濁った色は、物語が始まる中世のヨーロッパを表現している。『カイロへの道』は、特に16世紀のボスニア人地図製作者マトラクチュ・ナスーフの鮮やかな色のアラビア細密画からヒントを得ている 。『聖地カルバラーの秘密』のピンクの塔は、インスタレーションとしてリヴォリ城に本格的に再現されたものだが、イタリア・パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂にあるマトラクチュとジョットが描いたフレスコ画にインスパイアされたものだ。シャウキーはこの最後のシーンで、イタリアの勝利と来たるルネッサンスを暗示している。
シャウキーは予想外の繋がりを生み出す天才である。彼は「どのように自分の意思を封じ込め、神に身を預けるか」ということを学ぶために、8ヶ月イスタンブールに滞在し、スーフィーの詩人と話した。イスタンブールでは気が散ってしまい実行するのは難しいと考え、クルドの国境地帯へのチケットを取ったが、乗り過ごしてしまった。そこで思いつき、行き先は関係なく次に出発する飛行機へ飛び乗った。そして午前2時、トルコのコンヤに到着した。スーフィーの詩人にここが何処なのか尋ねると、メヴレヴィー教団を創設した聖者ルーミーの霊廟がある都市だと教えてくれた。「なるほど、何故私がここにいるのかわかった。」と彼は言った。彼のトルコ旅行での一番の思い出はこの経験だった。シャウキーは言う。「芸術は学び、発見するための手段でもある」と。
アーティスト・プロフィール
ワエル・シャウキー
アーティスト・映画監督
1971年エジプト生まれ。アレクサンドリア大学で美術を学んだ後、ペンシルバニア大学でMFAを取得。アラブ世界を主軸とした丹念なリサーチの成果を、映画、パフォーマンスなど、さまざまな形式で作品化し、国家や宗教、芸術的なアイデンティティを問い直す。なかでも『十字軍芝居』では、中世におけるイスラム教とキリスト教との激しい衝突の歴史を、真実とフィクション、霊的教義と純粋な探究心とを織り交ぜ、融合させつつ、再現した。その作品は世界演劇祭(2010)やMoMA PS1(2015)、ヨコハマ・トリエンナーレ2017など、世界各地の芸術祭や美術展で取り上げられている。
キャスト/スタッフ
監督 | ワエル・シャウキー |
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宣伝美術 | 阿部太一(GOKIGEN) |
制作 | 砂川史織 |
インターン | 寺田凜、宮岡夏希、山本采奈 |
プログラム・コーディネート | 横堀応彦 |
特別協力 | 株式会社ヒューマックスシネマ |
協力 | リッソンギャラリー |
主催 | フェスティバル/トーキョー |
関連ニュース
ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス」 ワエル・シャウキー『十字軍芝居』(三部のみ)とマリオネットを展示中 会期:2017.8/4(金)-11/5(日) 会場:横浜美術館 お問合せ:ハローダイヤル 03-5777-8600(8:00-22:00) WEB:http://www.yokohamatriennale.jp