劇評コンペ講評 (鴻英良)
まず最初の印象をいうと、今年の応募原稿は、去年のものより全体として格段によくなったと私は考えている。そもそも、昨年の応募原稿にしてからが、後に書かれたものの方が、最初に提出されたものよりも全体的によかった。それはすでに書かれたものを参照にしつつ劇評を批判的に書くという態度で演劇批評に臨んだ人が出てきたからであろう。
おそらく、今年度に応募した人たちは、昨年度の応募原稿を読みつつ、あるいは受賞作品を読みながら、何が要求されているのかを判断し、目の前にあるものを反省的に取り入れつつ、劇評を書いていったのであろう。これこそが歴史主義的な判断というものだ。
こうした私の想定は、継続的な劇評コンペそのものが、批評にとって意味があることを確証しているという主張につながるのである。