デッド・キャット・バウンスアーカイブ

12月20日(日)にF/TステーションでF/T09秋劇評コンペ優秀賞発表・講評会が行われました。
受賞者の皆様、おめでとうございます!


<優秀賞受賞作品>

柴田隆子氏 美しい静寂の地獄絵図 ―『神曲―地獄篇』 

堀切克洋氏 「本物」はどこにあるのか――『Cargo Tokyo-Yokohama』評

百田知弘氏 『あの人の世界』 劇評


追って審査員の皆様からの各作品・全体についてのご講評をアップいたします。
どうぞお楽しみに!

 『デッド・キャット・バウンス』は「お金」が主役のショーである。一般に我々が考える「お金」とは貨幣のことであり、ものやサービスと交換するための交換価値として存在する。一方「お金」には資本という側面もあり、生産とストックを同時に生み出す投資は、資本主義社会にとって必要不可欠なものである。ところがごく最近まで「お金」の教育と言えばまず消費者教育で、収支のバランスを考えた消費活動と貯蓄の大切さが教えられてきた。投資に関しては、専門知識や分析力が要求されるのでプロに任せるものとされ、市場が開放された今日でも自分とは縁遠いものと感じている人が多い。こうした現状に対し、演出家クリス・コンデックは、株式市場の虜になった自身の体験から、このような関係性を演劇の場に持ち込めないかと考えたのである。

 長原豊が怒っている。

 曰く、目下のところわたしたちは、いわゆる市場原理主義から逃れられないような状況にあるという。規制緩和の果ての二極化。それも、「勝ち」はほんの一握りの人々で、ほとんどは「負け」。いったい、こんな世の中に誰がしたのか? まったくもって正論である。