Photo: Kazuya Kato

F/T20アーティスト・ピット

ファシリテーター:西尾佳織

次世代のアーティスト育成を目的とした、鍛錬の場

企画概要

集団創作におけるリーダーシップのあり方、他者と協働する場のつくり方が問われています。また、COVID-19感染拡大により、集団創作における課題は、より複雑化し、困難な時代を迎えました。 F/T20では舞台芸術(主に演劇)ジャンルに特化し、これからにふさわしい演出法や集団創作の進行法を若手演出家と研究・開発する、少人数制のディスカッション型ワークショップを実施します。参加するアーティスト達が、相互批評を重ねながら、互いの作品の精度を高め合うと同時に、各自の創作に役立つ問題意識の共有の 場となること目指します。 本企画は、ウィズコロナ時代だからこそ問われる、集団創作や上演芸術の在り方に、アーティストと共に向き合う場ともなるでしょう。

アーティスト・ピットとは?

このプログラムは、アーティストが自身の活動に必要な言語と技術を意識的に獲得し、相互批評を通して作品や創作プロセスの質を高めていくための、鍛錬の場となることを目指しています。
昨今、アートプロジェクト等の普及によって、参加や表現のハードルが下がっています。F/Tはその傾向を、アートの解放として大いに歓迎すべきことであり、ますます押し進めるべきだと考えていますが、一方で、プロフェッショナルなアーティストの技術の熟達・思考の深化もいっそう重要になっていると信じています。

“アーティスト・ピット”は、自動車レースのピットインのように、アーティストが走り続ける合間に補給や整備・修理を行う場であると同時に、キャリアの途中で陥るかもしれない深い穴でもあります。「活動を見直し立て直すための準備の場」と、「自らの力で這い上がる鍛錬の場」としてこのプログラムが機能していくとことを願って「ピット」と名付けました。


F/T19アーティスト・ピット(リンク) https://www.festival-tokyo.jp/19/program/artist-pit.html

F/T20『アーティスト・ピット』テーマ
「次の10年を考える -いかにひらき、いかに閉じるか?」

 今回このアーティスト・ピットで、「演劇を10年やってきた人たちで集まって次の10年を考える」ということをしたいと思います。私自身が、活動を始めて10年経ったときに、ああ次の10年が見えない……と思って大きく立ち止まってしまったからです。 初めの10年を走り抜けるのに、作・演出・主宰というやり方は便利でした。自分が頑張れば、コストを(金銭的な意味でも、コミュニケーション的な意味でも)抑えて身軽にどんどん作品をつくれたからです。 でも徐々に、劇作と演出、演出と主宰を一人の人間が兼ねることの問題を感じるようになりました。そこが密着していると、創作は上演の面白さばかりに直進してしまいます。
 直進しちゃいけないのか? 上演が面白い方がいいじゃない。 と言われれば、面白くないよりは面白い方がいいけれど、上演として面白いことがその演劇活動の価値の最大化とは限らない、と答えます。上演は時間を超えられません。 そして作・演出・主宰制は、演出家と俳優の協働の関係性を歪める部分があるように思います。 読みの可能性が開かれた戯曲であれば、演出家と俳優は〈あいだ〉にその戯曲を置いて、対等に話せるかもしれない。でも作・演出家が企画者も兼ねて作品の向かう先を握ってしまっていると、俳優は作・演出家のやろうとしていることを探り、それに応えるという関係性に陥りがちになるのではないでしょうか。そうして俳優が主体性を発揮しようがなくなってしまうと、演出家自身も困ることになるでしょう。
 このような状況について、作・演出家もしくは演出家と、俳優とで話し合ってみたいと思います。 なんとなく「そういうもの」と固まってしまっている創作の慣習や定型を崩して一から話していくために、「アート」という言葉、「アーティスト」という言葉、「演劇」という言葉を一度やめて、その言葉の実態を微分して、別の言葉で言ってみるのはどうか? 例えば「演出家」と一言で言っても、細かい動き一つひとつまで決めることが演出だと思っている人もいれば、チームのメンバーから出てくるアイディアを交通整理することが演出だと思っている人もいる。「俳優」という同じ言葉で言っても、その仕事の仕方は様々。 なので、自分が本当にやってきたこと、やっていることを、より具体的な言葉で定義し直してみる。 その作業を通して、演劇における「プロフェッショナル」とは何か?が見えてくるんじゃないかと期待しています。今の日本では、「プロ=その仕事で食えている人」という定義が強いし、活動している側もそれを受け入れている面が強いと思うのですが、お金に依存しない定義の仕方を見つけたい。 (そうすることが回りまわって、演劇の仕事に正当な報酬が返ってくる状態につながる気がしています。)
 ……というように様々に絡み合った問題を、「次の10年を考える」というざっくり大掴みの枠の中で話し合っていきます。

ファシリテーター 西尾佳織




ファシリテーター・プロフィール

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西尾佳織

劇作家、演出家、鳥公園主宰。1985年東京生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を務めてきたが、2020年度より3人の演出家を鳥公園のアソシエイトアーティストとして迎え、自身は劇作・主宰業に専念する新体制に移行。『カンロ』、『ヨブ呼んでるよ』、『終わりにする、一人と一人が丘』にて岸田國士戯曲賞にノミネート。鳥公園の活動とは別に近年のプロジェクトとして、マレーシアのダンサー、振付家のLee RenXinと共にからゆきさんのリサーチなどにも取り組んでいる。2015年度よりセゾン文化財団フェロー。


ゲスト講師プロフィール

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國分功一郎

1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。主な著書に『中動態の世界──意志と責任の考古学』(医学書院、2017年、第16回小林秀雄賞受賞)、『民主主義を直感するために』(晶文社、2016年)、『近代政治哲学──自然・主権・行政』(ちくま新書、2015年)、『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞受賞)、『来るべき民主主義──小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書、2013年)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店、2013年)、『スピノザの方法』(みすず書房、2011年)。訳書にジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店、2004年)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫、2008年)などがある。

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アサダワタル(文化活動家)

1979年大阪生まれ。これまでにない不思議なやり方で他者と関わることを「アート」と捉え、全国の市街地、福祉施設、学校、復興団地などで地域に根ざしたアートプロジェクトを展開。2009年、自宅を他者にゆるやかに開くムーブメント「住み開き」を提唱し話題に。以後、文化的なアプローチからコミュニティの理想のかたちを提案する著作を多数発表。アーティスト、文筆家、品川区立障害児者総合支援施設アートディレクター(愛成会所属)、東京大学大学院、京都精華大学非常勤講師、博士(学術)。著書に『住み開き増補版 』(ちくま文庫)、『想起の音楽』(水曜社)など。グループワークとして在籍していたサウンドプロジェクト「SjQ++」では、アルス・エレクトロニカ2013サウンドアート部門準グランプリ受賞。

参加アーティスト・プロフィール

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伊藤 拓也

1980年岐阜市生まれ。演出家。『味覚鍛錬の会』、『週末は妻と英語』、『娘はいつ笑うか』などの極私的活動を日常的に行う。代表作に『RADIO AM神戸69時間震災報道の記録』リーディング上演や相模原障害者施設殺傷事件を扱った『世界が平和でありますように』など。ドキュメンタリー的手法を軸に、社会課題に取り組む演劇の使い方や、人の集まりそのものに強い関心を持つ。演劇エリートスクール第2期講師演出家。


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大河原 準介

1981年生まれ。宮城県仙台市出身、在住。桐朋学園芸術短期大学専攻科演劇専攻修了。 2007年、演劇企画集団LondonPANDAを旗揚げ。これまでに佐藤佐吉賞2010年度最優秀演出賞、若手演出家コンクール優秀賞などを受賞。2015年、ロンドンへ遊学。帰国後、2016年より活動拠点を地元仙台に移転。ハイペースな創作/公演と並行してワークショップの企画・運営なども精力的に行っている。


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近藤 瑞季

2014年早稲田大学文学部演劇コース卒業後、渡仏。2017年にナント市コンセルヴァトワール芸術学校・俳優科を首席で卒業。出演作品に、Nathalie Béasse「Mes petites météorites」「Song for you」、またヤン・クーネン監督中編作品「7 Lives」。 現在、ベルギー王立演劇学校INSAS演出科に在籍。

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酒井 一途

1992年東京生まれ。あらゆるひとが社会的役割や立場、自らの属性、共同体の規範から解放される〈自由のための場〉をつくること。目の前のひとと向き合い、一対一の関係性をみつめる「〈演じない〉ためのワークショップ」を開催。 2020年春から兵庫県豊岡市在住。豊岡演劇祭フリンジコーディネーター。
http://ittosakai.net/

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大道寺 梨乃

1982年東京生まれ。劇団FAIFAIの創立メンバーとして国内外での作品に俳優として参加。2014年よりソロでの活動を開始し『ソーシャルストリップ』を東京・横浜・北京・香港・バンコクにて上演。2015年よりイタリアに移住し以降は日本とイタリアを拠点に活動。自分や身の回りの人々の日常からつながる物語を現代のファンタジーとして上演する。主な作品に『これはすごいすごい秋』『朝と小さな夜たち』など。


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萩原 雄太

演出家。劇団かもめマシーン主宰。第13回AAF戯曲賞、利賀演劇人コンクール2016優秀演出家賞。17年、ルーマニアの国際演劇祭Temps'd Images Clujに参加し、18年にはベルリンで開催されたTheatertreffen International Forumに参加。代表作に『福島でゴドーを待ちながら』『俺が代』『しあわせな日々』など。2019年度よりセゾン文化財団フェロー。

実施概要

日程

第1回 11月30日(月) 10:0 0 - 17:00


第2回 12月1日(火) 10:00 - 17:00


第3回 12月3日(木) 10:00 - 17:00


第4回 12月7日(月) 10:00 - 17:00


第5回 12月8日(火) 10:00 - 17:00


第6回 12月14日(月) 10:00 - 17:00

実施方法 全日オンライン開催(ZOOMを予定)
募集人数 6名程度(予定)
参加費 無料
本プログラムは、全日程クローズドでの開催となります。なお、一般公開の形態としましては、ドキュメントの作成を予定しております。

フォトギャラリー

アーティスト・ピット ドキュメント

活動の様子をまとめた冊子を作成いたしました。

お問い合わせ

フェスティバル/トーキョー実行委員会事務局 研究開発プログラム担当:小倉・名取・岡野
TEL:03-5961-5202
MAIL:press@festival-tokyo.jp
〒171-0031 東京都豊島区目白5-24-12 旧真和中学校4F