ディレクターズ・メッセージ

ディレクターズメッセージ 開催発表によせて

フェスティバル/トーキョー18 エグゼクティブ・ディレクター
市村作知雄

戦争でもなく、平和でもないこの陰湿な世界、それを分断化された社会と言おうと何であれ、そこを飛び越え、脱ぎ捨てていく「新しい人」が世界中に大量にあらわれることを予感させるプログラムをフェスティバル/トーキョーは提示し続けてきた。今年も変わらない。「新しい人」がどのような世界を、またアートを創り出すのか、ほんの少しだけ、そして少しずつ見えてきている。私のできることは、それをプログラムとしてあらわせるだけなのだが、もう交代の時がきている。

フェスティバル/トーキョー ディレクター
長島 確

フェスティバル/トーキョーは新しい体制に移行します。 これまで当然と信じて疑わなかったさまざまな価値が、じつはとっくに失効していることに気づきながら、次の地平がまだ明確には見えていない。それが世界の現状だと理解しています。この現状に対して、さしあたり信じられるのは、表面の瞬間的な変化ではなく、もっと根本的なところでゆっくりと進む、思考や行動の枠組みの、愚直で誠実な問い直しと鍛え直しです。それはすでにあちこちで始まっていることも、私たちは知っています。

フェスティバル/トーキョーのこれまでの蓄積を継承しながら、数年かけて、新しい形を探っていきます。専門性のちがう2人による共同ディレクター体制もそのための試みです。フェスティバルの準備は通常複数年にまたがるので、ゆっくりとした着実な移行のために、前ディレクターにも今年に限りエグゼクティブとして残ってもらいます。ひとつひとつのプログラムが問いかけであり応答です。楽しみにしてください。

フェスティバル/トーキョー 共同ディレクター
河合千佳

ここ数年感じていることは、ひとつの作品を成立させるために、既に価値観を共有している限られた人を集めることや、個人の才能のトップダウンで創っていく方法は、もう通用しないのではないかということです。少なくとも私は、誰かのオーソドックスに合わせるのではなく、敢えて違う考え方や専門性を持っていたり、違う状況を背負っている人と、対話をしながら特別な時間を創ることに可能性を感じています。これまでの経験の中で、私と同じような感覚を持つ人が、国内外の地域を問わずにいることを掴んでいます。簡単なことではありませんが、まずは彼らとパートナーシップを組みながら、これからのフェスティバルをつくっていきたいと思います。