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本プログラムについて

俳優、観客が、池袋の風景と溶け合う―新たな野外劇の誕生。

琵琶湖湖畔に水上舞台を作り出した『呼吸機械』(2009年/朝日舞台芸術賞アーティスト賞)、岡山県・犬島の精錬所跡地で丸太4,000本を使用して野外劇場を作った『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』(10年)など、維新派の舞台は美術・音楽・踊り・俳優の発話、それら全ての要素をその土地の情景、空気に溶かし込み、「その場、その時」でしか体験し得ない空間と時間をつくり出す。 F/Tには、09年に『ろじ式』で初参加、その作品はもちろん、東京では初開催となった名物「屋台村」でも話題を呼び、会場となったにしすがも創造舎・校庭には観客、地域住民のべ4,000名もの人が訪れた。  

今回は維新派の代名詞でありながら、東京では約20年ぶりとなる野外公演をついに実現。しかも、これまで特色としてきた大規模な美術・装置を極力使わない、俳優の身体を中心に、観客と共に風景に深くかかわる作品を目指す。 本公演と同コンセプトで今年9月に上演される岡山県犬島版では、干潮時の入り江に出現する海抜0m以下の海底が舞台になる。それとは対照的に、演出の松本雄吉が東京の「風景」として公演会場に選んだのは池袋のビルの屋上。長年にわたり池袋のまちと文化の中心として存在する西武池袋本店の特別協力で、西武池袋本店本館と別館のあいだに位置する野外広場での上演が実現した。会場の下を走る鉄道の音、見渡す先に浮かび上がる新宿の高層ビル群・・・・・・光、音、情景、俳優、あらゆる要素から、観客一人ひとりが新たな池袋=都市の風景を発見し構築する、新たな野外劇がここに誕生する。


演出ノート

維新派は2011年から「風景画」シリーズを開始します。
「風景画」は、ある風景に俳優と観客が参加する三次元の絵画です。
「風景画」は、俳優と観客が風景を見つめ、考え、発見する装置です。
「風景画」は、過去を掘り起こします。
「風景画」は、現在を認識します。
「風景画」は、そこから世界を見渡します。
「風景画」は、世界からそこを見つめます。
「風景画」は、幾何学的風景論です。
「風景画」は、身体的風景論です。

松本雄吉