フェスティバル/トーキョー トーキョー発、舞台芸術の祭典
舞台公演にとどまらず、演劇を越境する試みで注目を集める高山明とPort B(ポルト・ビー)。これまでの活動の集大成として、フェスティバル/トーキョーで代表作 2作品を再創造・同時再演する。互いに呼応し対を成す両作品、その一方が"ツアー・パフォーマンス"『サンシャイン63』。2008年3月に『サンシャイ ン62』として発表された話題作が、一年のときを経てさらに深化し、再び池袋の街に展開される。
第二次世界大戦後、巣鴨プリズン跡地に建てられた池袋サンシャイン60。戦後日本の出発点とも言えるこの歴史的な場所を中心に、戦後の63年をたど
る「時のツアー」が始まる。ツアーの作り手は5人一組となった観客一人一人。約3時間半かけてサンシャイン60を巡る16ヶ所を「旅」し、そして最終訪問
地へ...。
建設当時は東洋一の高さを誇ったサンシャイン60。それが60階建ての高層ビルであることは周知の事実でも、A級戦犯7名を含む60名が処刑された巣鴨プ
リズン跡地に建てられたことはあまり知られていない。そのサンシャイン60が、ツアーを通じて歴史的オブジェへと異化され、"戦後史のランドマーク"へと
変容していく。1946年から2009年まで、63年間の歴史が、参加者一人一人の記憶と想起によって紡がれるだろう。
参加者は、5人一組となって池袋の街を散策する。受付で渡された地図を頼りに赴く先は、誰かの住まいだったり、ホテルの一室だったり、巨大書店の一 角だったりと色々だが、すべてに共通しているのはどこの窓からもサンシャイン60が見えること。参加者はサンシャイン60を眺めながら、巣鴨プリズンにつ いてのインタビューや東京裁判に関するドキュメントの朗読を聴いたり、部屋の住人とサンシャインを背景に記念写真を撮ったり、記憶や忘却についてみんなで 議論したり。
この公演の"舞台"は都市である。Port Bは、舞台装置で都市を創りだすのではなく、実際に存在する都市を「演劇公演」という枠組みの中に「引用」する。日常的に接している都市が、観客の"ツ アー"参加によって普段と異なる様相を呈し、非日常的な「もの」に変容していく。「ツアー・パフォーマンス」は、その様子を観客一人一人に体験してもらう ことで都市を「インスタレーション」の場に変える新しいタイプの演劇である。