フェスティバル/トーキョー トーキョー発、舞台芸術の祭典
ー 4大学4作品の上演+学生とOB・OG(若手演劇人)によるフォーラムー
近年相次いで誕生した大学の舞台芸術系学部・学科。そこでは第一線で活躍するアーティストやスタッフが学生を指導し、さまざまな形で彼らの作品づくりを支援している。
大学が積極的に環境を整え、機会を与え、学生たちはその中で創作に取り組む。あるいは、参加するアーティストたちも、教員であると同時に(むしろそれ以上に)実作者として、本気で学生と向き合う。作ることと教える(教わる)こと、創作と授業、アーティストと学生のあいだに結ばれた新しい関係から何が生み出されようとしているのか。それは、一時代前とは明らかに違うメンタリティに支えられた、新たな才能の育成、演劇の創造なのではないだろうか。
「演劇/ 大学」では、同時多発的に起こっているこうした動向に注目し、大学と連携しながら、その成果・課題を公開していく。大学の人材育成および創造活動の現状と課題をテーマとした「演劇/ 大学09 春」が、育てる側からの視点を軸にした企画であったのに対し、今回の「演劇/ 大学09 秋」では、育てられる学生の側に着目。教育現場で実際に創作された作品の上演のほか、学生とOB/OGを交えたフォーラムも開催し、演劇創造の現在と未来を探る。
主催:フェスティバル/トーキョー
共催:東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団)
協力:桜美林大学、京都造形芸術大学、近畿大学、多摩美術大学
ダンスでつづる「カサブタ1 枚分」の危うい感情
俳優教育からスタッフワーク、アートマネジメントに至るまで、" 演劇の力"を構成する要素を多角的・実践的に学ぶ桜美林大学総合文化学群演劇コース。最大の特徴は学内劇場プルヌスホールを使い、年5 回行われるOPAP(桜美林大学パフォーミングアーツプログラム)という公演形態。演劇・ダンス・パフォーマンス共に、より専門的に舞台を作ることでスタッフからキャストまで演劇の全てについて経験できる授業となっている。演出家・振付家はプロ、他は全て学生、ただしキャストは全てオーディションで選ぶ。
『カサブタ』は、舞踊家で同大学准教授・木佐貫邦子の指導のもとO P A Pで創作された作品。2 0 0 4 年から大学で指導にあたり、OPAPでこれまで5作品を学生と共に制作してきた木佐貫が、演劇コース在校生との創作テーマに選んだのは、カサブタ=自分を守っているものを剥ぎ取りたくなる衝動についての身体的考察。傷と治癒の間の危うい感情を、ダンスの文法で舞台につづる。
振付・演出:木佐貫邦子(桜美林大学准教授)
出演:(演劇コース在学生)
木村愛子、米田沙織、目澤芙裕子、石川あゆみ、白取麻実、今野良咲、北尾亘、久津美太地、藤井友美、水越朋、岡本優、村田茜、森本あん、早川紗代、工藤響子、大谷悠、水岡渚沙、吉田拓、槙悠吾、森山貴邦、加藤拓実、大野真由子、細野ゆりか、柴田未来、井草佑一、計良瑠衣、鷹栖歩莉、横地梢、中佐真梨香
木佐貫邦子 振付・演出:木佐貫邦子(舞踊家)
1981年ソロダンスデビュー。本年3月にはソロ21作目『GRAYISH GRAY』(青山スパイラルホール)を発表。深さとみずみずしさに彩られたダンスを披露した。93年よりダンスコミニュティneoを主宰。若手の育成にも力を注ぐ。2004年からは桜美林大学総合文化学群演劇専修でダンス教育に携わる。学生と共に創り上げる桜美林大学パフォーミング・アーツ・プログラム(OPAP)ではこれまでに5作品を発表した。
「命がけの恋」の向こうに「今」に重なる「理」を見る
学内の本格的な劇場施設・京都芸術劇場を拠点に、大学と大学院が連携し、高度な専門教育を受けられる体制を持つ京都造形芸術大学。大学院の「芸術表現専攻」では、異なる専門分野を持った芸術家志望の大学院生が、様々な領域を横断的に学び、幅広い知見を身に着けつつ、専門的な指導教員のもと、各自の専攻領域を深化させていくプログラムが組まれている。
今作品は2008年より同大学大学院芸術研究科修士課程に在籍する、木ノ下裕一が主宰する「木ノ下歌舞伎」を中心に、在校生・卒業生の混成キャストで創作。歌舞伎や文楽な
ど古典の歴史性を踏まえたうえで、現代性を加味した上演をめざす木ノ下が、「八百屋お七の恋物語」の部分にのみスポットが当てられがちな『伊達娘恋緋鹿子』をさらに掘り下る。「社会/人」「体制/反体制」「生/死」という対立構造の中で、翻弄される人々の物語として読み解き、新たに息吹を吹き込む。
作:菅専助ほか / 演出:木ノ下裕一(京都造形芸術大学大学院芸術研究科修士課程2年)
出演:(舞台芸術学科在校生および映像・舞台芸術学科卒業生)
伊藤彩里、cossi(chikin)、濵名綾子、三鬼春奈、眞栄田貴豊、諸江翔太朗
木ノ下裕一 演出:木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎 主宰)
小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受ける。同時に落語を介在に歌舞伎、文楽、能などの古典芸能への関心を広げ、後に木ノ下歌舞伎を立ち上げ、中心に古典作品上演の演出や監修を行う。08年より、京都造形芸術大学大学院 芸術研究科 修士課程に在籍。
木ノ下歌舞伎での演出近作に08年12月『摂州合邦辻』、09年6月『桂川連理柵』がある。
状況劇場初のテント上演作品に学生が体当たりで挑む
実習中心のカリキュラムで創造の最前線に立つために学ぶ〈演技・創作系〉、演劇や舞踊を通じ教育や社会に貢献できる人材を育成する〈ドラマコミュニケー
ション系〉、そして舞台芸術に対して提言・発言できる人材育成のために少人数のゼミ形式による授業を実施する〈TOP(Theater
Organization Planning)系〉、これら3 つの系でスペシャリストを育てる近畿大学 文芸学部芸術学科舞台芸術専攻。09
春に続き、唐十郎の初期作品『腰巻お仙─義理人情いろはにほへと篇』を上演する。
出演者・スタッフは前回同様、通常の授業枠・学年枠を離れ一回生〜三回生とOBを含めた有志による「唐十郎演劇塾」の参加メンバーで構成。状況劇場初の紅テント公演として、東京・新宿の花園神社で1 9 6 7 年8月に上演され、初期の唐作品に特徴的な「胎内回帰的」でありながら「母性的なるものからの決別と自立」を描いた伝説的作品が、40 年余の歳月を越えて蘇る。
作・演出:唐十郎(近畿大学特任教授) / 指導教員:松本修(近畿大学准教授) 出演:(近大「唐十郎演劇塾」生) 小林徳久、中田有紀子、高阪勝之、藤波航己、青山哲也、松山弓珈、居石竜治、久保田友理、喜多瑞穂、東 千紗都、芝原里佳、上埜美佳、森本萌黄、古川靖子、福谷圭介、松原由希子
唐十郎 作・演出:唐十郎(劇作家・演出家)
1940年、東京都生まれ。明治大学文学部演劇科卒業。63年に劇団状況劇場を結成。67年に『腰巻お仙-義理人情いろはにほへと編』を紅テントで上演して以来、テント公演を中心に演劇活動を行う。現在、劇団唐組座長。劇作家、演出家、小説家、俳優として活動を続ける。『海星 河童』(78)で泉鏡花賞、『佐川君からの手紙』(83)で芥川賞、『泥人形』(03)で読売文学賞、紀伊国屋演劇賞、鶴屋南北戯曲賞を、06年には読売演劇大賞芸術栄誉賞を受賞。 97〜04年、横浜国立大学教授。05年より近畿大学教授。現在、近畿大学国際人文科学研究所所長。
学生オリジナル作品3本の連続上演
ライブ表現としての特質を持つ演劇やダンス、記録表現としての特質を持つ映画や写真。これら両領域を往還しながら、独自の<表現>を探ることを学ぶ多摩美術大学映像演劇学科。カリキュラムの核には、学生が自ら企画を提案し、創作する科目群『表現活動(FIELD TRIAL)/通称FT』がある。学生はFTを中心に、企画立案から作品制作、公開発表に至る過程を繰り返しながら創造力・企画力を磨き、主体的な表現活動を継続していく力を養っている。
『ファスナー』『氷山のイッカク』は09年度前期のFTから生まれた作品で、7月に学内で連続上演した4企画の中から選抜された。『健康少年』は活発に行われる自主企画公演からの選抜作品。09年7月に学内で初演し、8月に東京芸術劇場前で行われた日比野克彦氏のアートプロジェクト「オープンシアターミュージアム[But-a-I]」での再演を経て、今回の上演となる。
『ファスナー』作・演出:伊藤衆人(多摩美術大学映像演劇学科2年)
出演:(映像演劇学科在校生)
栢下雅章、山元啓太郎、大嶽典子、山崎晃裕、加藤諒、伊藤衆人
『氷山のイッカク』作・演出:新見聡一(多摩美術大学映像演劇学科3年)
出演:(映像演劇学科在校生)
松波蓉布子、新見聡一、高橋宏朋
『健康少年』作・演出:大石貴也(多摩美術大学映像演劇学科2年)
出演:(映像演劇学科在校生)
木村達人、大石貴也、田中優花
指導教員:加納豊美(多摩美術大学教授)
作・演出:伊藤衆人
高校時代から演劇部で活躍。名前の通りサッカー少年(?)でもあり、後進の指導にも当たる。野田地図第14回公演『パイパー』にアンサンブルで出演。
作・演出:新見聡一
前期の学内公演ではクラス代表,運営代表も務める。フリークライミングの選手としても活躍。野田地図第14回公演『パイパー』にアンサンブルの一員で出演。
作・演出:大石貴也
某大手有名企業のITエンジニアから演劇の世界へ転職(?)。野田地図第14回公演『パイパー』にアンサンブルで出演。