95kgと97kgのあいだ
作品について 95kgと97kgのあいだ 演出:蜷川幸雄 作:清水邦夫 出演:さいたまゴールド・シアター

『95㎏と97㎏のあいだ』は、85年に劇作家・清水邦夫が蜷川の主宰する「GEKISYA NINAGAWA STUDIO」のために書き下ろした戯曲。清水・蜷川コンビの名を一躍世に知らしめた傑作、『真情あふるる軽薄さ』(69年初演。2001年に蜷川演出により再演されている)の、「その後」を描くかにも思える内容となっている。
08年5月上演の際には、「一群」にさいたまゴールド・シアターの団員を、「行列」にNINAGAWA STUDIOの俳優をキャスティング。対象的なふたつの集団を実年齢でも対照的な二集団が演じることで、明確な物語を持たない戯曲に揺るがしがたいリアリティを持たせることに成功した。
また、40名を越す団員の絶妙のアンサンブルと、生活者としての肉体、その実体験を生かした台詞が生み出す存在感など、さいたまゴールド・シアターの持つ「武器」をフルに生かした演出は、20年以上前に執筆された戯曲の核心である時代への不審と疑問、それを凌駕しようと渦巻く人間の生命力を見事に再生させ、観客を圧倒した。
今回は劇団にとって、ホームグランドである彩の国さいたま芸術劇場を出た初の外部上演となる。ゴールド・シアター創設の際に蜷川の中にあったイメージは、ポーランド前衛演劇の旗手であるタデウシュ・カントール率いる劇団クリコット2による『死の教室』。老人にも死者にも見える俳優たちが、身体に刻み込まれた歴史を音楽的に舞台上に解放する作品は、82年の来日公演はもちろん、世界中に衝撃を与えたが、ゴールド・シアターと『95㎏と97㎏のあいだ』も今回、その集団と演劇表現の持つ可能性の大きさで、客席を驚愕させることになるだろう。