1949年神奈川生まれ。75年に山海塾を創設。『アマガツ頌』(77)、『金柑少年』(78)、『処理場』(79)を発表後、80年に初めての世界ツアーを行う。81年より、フランスおよびパリ市立劇場を創作の拠点とし、同年アヴィニョン・フェスティバルで『漠紀』を発表。82年以降、およそ2年に1度のペースで、パリ市立劇場との共同プロデュースにより、12 作品(※)を発表している。来春、新作をパリ市立劇場にて発表する。
山海塾以外でも活躍する天児は、88年に米国ジェイコブス・ピロー財団の招待でフィリップ・グラス作曲による『風姿』を発表。89年には、東京のスパイラルホール(青山)の芸術監督に就任し、『アポカリプス』(89)および米国人ダンサーを使った『フィフス-V』(90)の構成・演出・振付をてがけた。92年、バニョレ国際振付コンクールの審査委員長を務め、同年、フランス政府から芸術文化功労章(シュバリエ章)を受章。
オペラの演出も手がけ、97年にはペーター・エトヴェシュ指揮によるバルトークのオペラ『青ひげ公の城』を東京国際フォーラムで上演。98年には、同氏の作曲による新作オペラ『三人姉妹』(原作:チェーホフ)をフランス・リヨン国立歌劇場にて演出(世界初演)、フランス批評家協会最優秀賞を受賞した。なお、『三人姉妹』は01年11月にパリのシャトレ座にて、02年3月にベルギー・ブリュッセルの王立ラ・モネ劇場、4月にリヨン国立歌劇場、5月に、オーストリアのウィーン・フェストボーヘンにて再演された。また08年3月、10年ぶりに、ペーター・エトヴェシュ作曲による新作オペラの演出を手がけ、“Lady SARASHINA”(原作:菅原孝標女「更級日記」)を、リヨン国立歌劇場にて世界初演。本作で、再びフランス批評家協会最優秀賞を受賞した。09年2月にオペラ・コミックにて再演。
95年 外務大臣表彰(山海塾)
01年 第33回舞踊批評家協会賞(山海塾)
02年 第26回ローレンス・オリヴィエ賞の「最優秀新作ダンス作品賞」(『ひびき』)
04年 平成15年度芸術選奨文部科学大臣賞[舞踊部門](天児牛大)
07年 第6回朝日舞台芸術賞グランプリ(『とき』)およびキリンダンスサポート(山海塾)
※パリ市立劇場との共同プロデュース作品
『縄文頌』(82年)、『熱の型』(84年)、『卵を立てることから-卵熱』(86年)、『闇に沈む静寂-しじま』(88年)、『そっと触れられた表面-おもて』(91年)、『常に揺れている場のなかで-ゆらぎ』(93年)、『ゆるやかな振動と動揺のうちに-ひよめき』(95年)、『遥か彼方からの-ひびき』(98年)、『かがみの隠喩の彼方へ-かげみ』(00年)、『仮想の庭-うつり』(03年)、『時のなかの時-とき』(05年)、『降りくるもののなかで-とばり』(08年)
75年に主宰・天児牛大によって設立された舞踏カンパニー。80年より海外公演を開始し、82年からは、世界のコンテンポラリーダンスの最高峰であるパリ市立劇場(※1 THEATRE DE LA VILLE, PARIS)を創作活動の本拠地として、およそ2年に1度のペースで新作を発表している。
日本で生まれたカンパニーでありながら、82年以降の作品は、すべてパリ市立劇場との共同プロデュースによる。(※2) 。厳しく作品の質を問う同劇場が、25年以上にも渡り共同プロデュース形式で創作を支援し続けているカンパニーは、世界でもわずかしか存在しない。
山海塾の作品は、演出・振付のほか、空間や衣裳のデザインも総合的に天児牛大が創作している。天児は一貫して舞踏を「重力との対話」として捉えながら、「誕生」「死」といった普遍的な人間の内的本質に迫る。身体言語に基づく独自のアートフォーム(表現形態)を創りあげたこと、作品の普遍性、そして何よりもその表現の芸術的強度によって、世界各国できわめて高い評価を得てきた。
山海塾はヨーロッパだけではなく、北米、中南米、オセアニア、アジアなど世界43カ国のべ700都市以上でワールドツアーを行っている。01年5月には、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場(Sadler's Wells Theatre)(※3)で『遥か彼方からの―ひびき』を上演。同作は、02年2月15日、イギリスで最も権威のある舞台芸術賞であるローレンス・オリヴィエ賞(※4)の“最優秀新作ダンス作品賞”(Laurence Olivier Award for Best New Dance Production)を受賞。07年1月、山海塾の『時のなかの時―とき』が、年間のベストステージに対して贈られる朝日舞台芸術賞のグランプリを受賞。さらに、受賞対象となったダンス作品の中から選ばれるキリンダンスサポートが、山海塾へ贈られた。
※1 パリ市立劇場(Théâtre de la Ville, Paris)
パリのシャトレ広場に位置し、世界でも有数の質の高いプログラムをもつ劇場として有名。「コンテンポラリーダンスの殿堂」とも呼ばれ、上演される作品は、世界のダンス業界から高い注目を集める。
※2 共同プロデュース
パリ市立劇場と山海塾との共同プロデュース契約は、将来にわたる長期間の創作活動を保証するものではなく、新作発表の都度、次回の契約の有無が決定される。
※3 サドラーズ・ウェルズ劇場(Sadler's Welles Theatre)
イギリスにおける舞踊の中心的な役割を果たしている劇場。98年に新装オープンし、国際的でダイナミックなプログラムをロンドンの観客へ紹介し続けている。
※4 ローレンス・オリヴィエ賞
演劇・オペラ・ダンス等で優れた個人・団体へ贈られる、イギリスの歴史ある舞台芸術賞。76年に前身であるThe Society of West End Theatre Awards が創設され、84年に現在の名称となった。日本人では、85年に森下洋子氏が個人賞で受賞されている。オリヴィエ賞の作品賞を受賞した日本のカンパニーは山海塾が初。
山海塾ホームページ www.sankaijuku.com