プロフィール

松井 周 | 劇作家・演出家・俳優

1972年東京生まれ。96年、俳優として劇団青年団に入団。俳優活動を続けながら戯曲を執筆し、日本劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作に二度選ばれる。現在は青年団での俳優活動に加えて、自作を演出する劇団サンプルを立ち上げ、劇作・演出活動にも意欲的に取り組んでいる。08年『家族の肖像』は岸田國士戯曲賞最終候補に選ばれた。
「フェスティバル/トーキョー09春」では、マリウス・フォン・マイエンブルグ作『火の顔』を演出。海外戯曲を現代日本の皮膚感覚と接続させたその手腕が高く評価された。 10年2、3月には北九州芸術劇場プロデュースによる新作公演を控える。09年よりセゾン文化財団より助成(ジュニアフェロー)を受ける。

自作の戯曲(すべて作家本人の手で演出)

・『通過』(04年5月@こまばアゴラ劇場、09年5月@三鷹市芸術文化センター星のホール):
 第9回(03年度)日本劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作。
・『ワールドプレミア』(05年5月@こまばアゴラ劇場):
 第11回(05年度)日本劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作。
・『地下室』(06年5月@アトリエ春風舎)
・『シフト』(07年1月@アトリエ春風舎)
 自作を演出する集団、サンプルが青年団から独立。
・『カロリーの消費』(07年9月@三鷹市芸術文化センター星のホール)
・『家族の肖像』(08年8月@アトリエ・ヘリコプター)
・『伝記』(09年1月@こまばアゴラ劇場)

自作以外の戯曲の演出

・サラ・ケイン作『パイドラの愛』(08年2月)
 (文学座+青年団自主企画交流シリーズ@サイスタジオコモネA)
・マリウス・フォン・マイエンブルグ作『火の顔』(2009年3月)
 (フェスティバル/トーキョー09春@東京芸術劇場小ホール1)

カンパニープロフィール
サンプル

劇作家・演出家・俳優の松井周が作・演出する劇団。
2004年に処女作『通過』が未上演にして第9回日本劇作家協会新人戯曲賞入賞 。続く2作目『ワールドプレミア』で第11回日本劇作家協会新人戯曲賞入賞。『地下室』『シフト』と話題作を続けて発表し、青年団リンクを経て、5作目『カロリーの消費』で劇団名を「サンプル」とし、辻美奈子、古舘寛治、古屋隆太の3俳優とともに劇団として始動した。
その作品世界は、価値を反転させることと空間、身体、時間の可能性を探り続けることを特徴としている。疑似家族、徘徊、暴力、ユートピアなどをキーワードに、現代人の自己喪失のありさまを鋭く切り取る。
代表作『カロリーの消費』には痴呆の始まった母親の介護を病院に委託している息子を中心に、権威を放棄しアブノーマルな性愛に没頭する医者、疑似親子関係に固執するフィリピン人介護士、自分探しのために町をさまよう若い女性などが登場。書割のような薄っぺらい世界の中をあたかも無目的に歩き続ける彼らの姿を通じ、人間の営みは「カロリーの消費」でしかないにもかかわらず、だからこそ価値があるという強烈な逆説を示した。
また、08年に岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされた『家族の肖像』は、<「転向」することを常態と認識しながらも、どこかで誰かと「転向」できない何かを共有したいと願っている者たちの、細い糸のつながりを表現する>という企画意図の通り、廃棄処分のコンビニ弁当がさまよう先の家々の、あまりにも孤立化し、乾いた現代的状況を表現した。
こうしたサンプルの表現は、演出・美術・照明・衣装の力が結集して作り上げる強烈なビジュアルに加え、ドラマトゥルクと共に強化される作品の構成力によるところが大きい。戯曲を解体し、効果的な表現手法を探し、細部にわたって突き詰める共同作業は、圧倒的な世界観の完成を支えている。
09年からは松井周がセゾン文化財団から助成を受け、益々の期待と注目を集めている。