フェスティバル/トーキョー トーキョー発、舞台芸術の祭典
私たちは何を語ることができるのか?-演劇の想像力を問い直す対話の場。
第一線の実践者や理論家を迎え、震災後F/T11で制作・発表された作品群を具体例としながら、演劇/芸術の実践と社会との接続を確認、問い直すシンポジウム。現場と思想哲学の双方の立場から投げかけられる課題と議論を通し、私たちはいかに演劇の未来を掴みとるのだろうか。
11.9 (Wed) 16:00-18:00
表象困難な現実、途方もなく「大きな物語」の出現を前に、私たちは何を語ることができるのか? 3.11がもたらした日常の切断、社会の亀裂や制度的限界 を前に、芸術表現や言論活動が果たすべき責任とは何か? その時、言葉の力、演劇の力は? 震災後のクリエーションの現場と公共政策を横断しながら、再び 芸術の公共性を問い直す。
パネリスト
近藤誠一(文化庁長官)
1946 年生まれ。文化庁長官。外務省広報文化交流部長、国際貿易・経済担当大使、UNESCO(国連教育科学文化機関)日本政府代表部特命全権大使、駐デンマーク特命全権大使などを歴任し、2010 年7月より現職。著書に「歪められる日本イメージ」「パリ マルメゾンの森から」「文化外交の最前線にて」「外交官のア・ラ・カルト」など
ハンス=ティース・レーマン(演劇理論家/批評家)
1944年ドイツ生まれ。演劇理論家・批評家。ドイツ語圏における現代演劇研究の第一人者。フランクフルト大学教授。また、世界各地の大学にて客員教授を務めている。1999年に発表された演劇理論書『ポストドラマ演劇』は現在18カ国語に翻訳され、世界の演劇潮流に多大な影響を及ぼしている。また前任のギーセン大学応用演劇学科からはリミニ・プロトコルや ルネ・ポレッシュなど多くの才能が輩出され、教育者としても高い評価を受けている。
相馬千秋(F/Tプログラム・ディレクター)
1975年生まれ。フェスティバル/トーキョープログラム・ディレクター。2002年よりNPO法人アートネットワーク・ジャパン所属。主な活動に東京国際芸術祭「中東シリーズ04-07」、横浜の芸術創造拠点「急な坂スタジオ」設立およびディレクション(06-10年)。第一回のF/T09春より現在まで、F/Tの全企画のディレクションを行っている。
11.9 (Wed) 19:00-21:00
緑の党の創設者でもあるヨーゼフ・ボイスが、社会運動を「社会彫刻」と呼び、アートとして提示してから40年。中東諸国で進むソーシャルメディアを駆使した革命の波、そして現実がフィクションを超えた危機を前に、アート/ジャーナリズム/アクティビズムの境界は無化され、現実を変革する企てとしてあらたな動きを見せ始めている。その先駆者たちの実践から、来るべき表現活動/社会活動の新地平を模索する。
パネリスト
津田大介(ジャーナリスト)
1973年生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学社会科学部卒業。IT・音楽ジャーナリストとして、ネット、音楽、ハード、マルチメディア系の記事を執筆。2009 年の「Twitter社会論~新たなリアルタイムウェブの潮流~」で注目を集め、日本におけるTwitterジャーナリストとしても認知されている。
中沢新一(人類学者)
1950年山梨県生まれ。明治大学野生の科学研究所所長。宗教から哲学まで、芸術から科学まで、あらゆる領域にしなやかな思考を展開する思想家、人類学者。著書に「チベットのモーツアルト」「森のバロック」「哲学の東北」「カイエ・ソバージュ」「アースダイバー」「芸術人類学」「日本の大転換」など多数。
高山 明(演出家)
1969年生まれ。2002年演劇ユニットPortBを結成。演劇を専門としない表現者たちとの共同作業から、既存の演劇の枠組みを超えた作品を発表。F/T10では、インターネットを通じて観客を都市の現実へと接続する『完全非難マニュアル東京版』で話題をさらった。またF/T09秋で発表した『個室都市 東京』は11年の「ウィーン芸術週間」に招聘され、国際共同製作による『個室都市ウィーン』に発展、ドイツ語圏で高い評価を得た。
11.10 (Thu) 16:00-18:00
1923年関東大震災、終戦、95年の阪神大震災とオウム事件、2001年の9.11、そして3.11-。「終わりなき日常」が断絶した時、同時代表現は 何を映し出してきたのか? 戦後の文学や演劇と、95年以降のサブカルチャーやアート、そして3.11以降の表現を横断的に比較しながら、日本文化に刻まれた痕跡を検証し、そこに生まれるあらたな表現の可能性と限界を探る。
パネリスト
宮台真司(社会学者)
1959年仙台市生まれ。社会学者、首都大学東京教授。東京大学大学院博士課程修了。90 年代には行動する論客としてメディアで脚光を浴び、現在はインターネット動画番組や個人ブログなど自らの媒体を通じて社会に発信を続ける。著書に「終わりなき日常を生きろ」「14 歳からの社会学」「日本の難点」など。
宮沢章夫(劇作家・演出家・作家)
1956年静岡県生まれ。90年、遊園地再生事業団を始動。92年の『ヒネミ』で第37回岸田國士戯曲賞受賞。2000年から3年間の休止期間を経て、03年『トーキョー・ボディ』で活動を再開。テキストと映像、パフォーマンスを併置した「第二期」とも言えるスタイルを示す。芥川賞候補にもなった「サーチエンジン・システムクラッシュ」などの小説、エッセイ、評論でも活躍。早稲田大学文化構想学部教授も務める。
黒瀬陽平(美術家・美術評論家)
1983年生まれ。2008年「Review House」を創刊、批評活動を開始。10年に「カオス*ラウンジ宣言」を発表後、藤代嘘と共同企画「カオス*ラウンジ in 高橋コレクション日々谷」、「破滅*ラウンジ」を開催し、さまざまな議論を呼ぶ。論文に「『らき☆すた』-空転するメタ意識」「キャラクターが、見ている-アニメ表現論序説」「新しい「風景」の誕生-セカイ系物語と情念定型」。
11.10 (Thu) 19:00-21:00
人と情報の移動が加速度を増すアジア地域と日本。アジアからの移民者が拡大し、「内なる他者」としてのアジア人コミュニティと向き合うことが求められる日 本社会。一方、アジア全域にわたり文化商品を媒介に繋がる若い世代のリアリティは、いかなる新展望を拓きうるのか? その時、演劇は? 共有可能な創造と批評のプラットフォーム創出に向け、アジアの同時代の問題意識に迫る。
パネリスト
住友文彦(キュレーター)
1971年生まれ。東京都現代美術館などに勤務し、昨年はメディアシティソウル2010(ソウル市美術館)の共同キュレーター。現在は、別府国際芸術祭「混浴温泉世界2012」のキュレーターのほか、現代美術の展覧会企画、執筆/編集、東京大学等の非常勤講師をつとめる。「アート&テクノロジー過去と未来」展(ICC/東京/2005)、「川俣正[通路]」(東京都現代美術館/東京/2008)]、ヨコハマ国際映像祭2009などを企画。また、2007年には中国を巡回した日本の現代美術を紹介する展覧会を企画。おもな共著に、『キュレーターになる!』などがある。
福嶋亮大(文芸評論家)
1981年生まれ。文芸評論家、中国文学者。現在は京都大学文学部非常勤講師。現代の消費文化の諸相、及びその東アジアにおける拡散を研究テーマとする。著書に「神話が考える──ネットワーク社会の文化論」。その他「ユリイカ」「思想地図」「新潮」などに論文を寄稿。
松田正隆(劇作家・演出家)
1962年生まれ。劇作家・演出家・京都造形芸術大学舞台芸術学科客員教授。90 年、京都を拠点に時空劇場を結成。長崎弁を用いたせりふ劇『紙屋悦子の青春』『坂の上の家』『海と日傘』の長崎三部作で一躍注目される。96年『海と日傘』で岸田國士戯曲賞を受賞。97年劇団を解散、劇作家専業を経て、2003年にマレビトの会を結成。近年の主な作品に『声紋都市-父への手紙』(09年)、『PARK CITY』(09年)、『HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』 (10年)などがある。
司会(テーマ1、3)
鴻英良(演劇批評家)
1948年生まれ。演劇評論家。専門はロシア芸術思想。ウォーカー・アート・センター・グローバル委員、国際演劇祭ラオコオン芸術監督、舞台芸術研究センター副所長を歴任。著書に『二十世紀劇場―歴史としての芸術と世界』、共著に『反響マシーン―リチャード・フォアマンの世界』他、訳書にカントールの『芸術家よ、くたばれ!』、タルコフスキー『映像のポエジア』などがある。また『シアターアーツ』第一期編集代表、『舞台芸術』(1~10号)編集委員を務めた。
司会(テーマ2、4)
濱野智史(批評家)
1980年生まれ。批評家、情報環境研究者。著書に「アーキテクチャの生態系」、論文に「ニコニコ動画の生成力」(「思想地図」)があり、インターネットにおけるコミュニティを中心に研究、批評活動を行う。2005 年に国際大学GLOCOM 研究員。06年より日本技芸リサーチャーを務める。