ドラマ演劇における上演の起源、それは戯曲の言葉である。起源としてのテクストは通常、役者の演技の規範となり劇構造を支配する法として上演の前に立ちふさがる。新劇以降の演劇実践は、テクストと上演のこうした主従関係をいかに結び直すかの模索であったともいえるが、dracomの『事件母』は、この「上演の起源としての言葉」を「人間の起源としての母」に結びつけることで、単なる現代日本の写し絵でもメタ演劇でもなく、言語によって形づくられ、文法という法に拘束された人間の姿も射程に入れた大きな物語を立ち上げることに成功している。
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