Q
それでは次に、前田さんと三浦さんにお話を伺っていきたいと思います。
お二人は「戯曲」と「俳優」というものにこだわって作ってらっしゃるので
ぜひ、おふたりには「演劇を脱がない」という立場の意見も
お伺いしたいと思うところなんですけれども。
前田さんは今回の参加アーティストの中で唯一、
自分で劇作、戯曲をオリジナルで書いていて
それを演出すると、また俳優としても出られるわけですけれども、
『迷子になるわ』という戯曲を書きたいとおっしゃっています。
その真意を、ぜひ教えてください。
前田
あの、ちょっとなんかみんなすごく難しい......っていうか、
凄いことをおはなしされているから、とても恐縮なんですけれども。
僕は単純に、ほんと個人的な、
自分の悩み相談ていうか、悩み告白みたいになっちゃうんですけれど......。
戯曲を書き始めて10年くらい経つんですけれど、
だんだんその、書くのが巧くなってきてしまって。
なんか昔はどうやって書いたらいいかも分からなかったし、
とにかく必死に書いていたらそれが作品になっていたんですけれども。
それがだんだん、もうちょっと、
「このへんをこのくらい書いておけばいいか」とかいうのが、
だんだん巧くなってきてしまって、
そうなってくると、何のために書いているのか?
とか、
昔は誰に頼まれてもないのに書いてたんですけれど、
だんだんこう、例えば「F/Tでやるから書こう」とか、
自分の欲望からだんだん離れていっているような感じがして、
すごく最近「ヤバイな」と思っていたんですね。
で、そのことをすごく考えたりして、
なんか、例えばその、
この物語を「ココからココまで書こう」としたときに
それが昔だったら、「ココからココまで行く」のに、
いろんな行かなくていいところに行っちゃったりとか。
それで本当に迷子みたいになって戻ったりって
そういうことをずっと繰り返していたんですけど、
もう最近はストレートにそこに行けるようになってしまって。
そうすると、戯曲としては洗練されていて
たぶん演劇としては洗練されていくんだと思うんですけれど、
なんかその「洗練されていく」っていうのがすごく、
無機的というか、「あんまり面白くないな」というふうに
自分では思い出してきたので、
どうにかこう迷子になるようにできないか、
っていうことを考えているんですけれど、
考えながら迷子になろうとすると、
すごく作為的な迷子というか作為的にちょっと、
「行ったことない道に行ってみよう」みたいな戯曲の書き方になっちゃって、
なんかそれはそれで作品としては成立するんですけれど
あんまり面白くないっていうか、
それもなんかマニュアル化されちゃったらつまんないな、って。
だから、とにかく今回は失敗、するかもしれない(苦笑)
あんまり面白くないかもしれないけれど、まあそれはいいやと思って。
一回くらい失敗しても、多分まだ大丈夫だろうと思って。
ちょっとそういうことをしてみたいな、と。
ずっとやってくるとどんどん、みんなから評価してもらったりとか
今もこんな大勢の人の前でしゃべらせてもらったりとか。
そういうふうになってくるとだんだん、
なんかよく分からないですけれど、
変な、
それこそ「資本主義社会に対する不安」みたいなことを
書かなきゃいけないんじゃないか。
とか、
だんだんプレッシャーみたいなのだとか、
「どうせみんな岡田さんの方が好きなんだ」とか。
どんどんそういうことを考えながら仕事をするようになってきちゃって。
だからもう、そういうことからもう、逃げ出したい(苦笑)
だからあの、パンフレットの中では
「王道を逃れて、敢えて迷子になる」みたいな
カッコイイ書かれ方をしたんですけれど
そういうわけじゃなくて実際にもうすでに自分の気持ちが迷子になっちゃって、
なんで書いてるのか分からないし、
もうちょっと前まで正直もう、演劇なんかしたくないっていう。
もう、なんか......ちょっとバイトとかして暮らせばいいや、
っていうような気持ちになってたんですけど。
だったらもう、今せっかく迷子になっているんだから、
その迷子になった状態で
よく分からない――自分でも何で書いてるんだか分からない
そういう作品をつくれたら、
うまく転べば面白くなるかな、って。
ちょっともう開き直りで、
そういうことをやってみようかな、という風に思ってます。
ただ、そこまで思い切れないで、
なんか、やっぱり怖くなっちゃって、
「ちょっといい話」みたいなのを
書いちゃうんじゃないかなぁ〜っていう懸念はあるので、
そのへんをみなさん実際に見て確かめて頂ければ
いいかな、と思います。
はい。
ありがとうございます。