【クルーレポート】ポストパフォーマンストーク タニノクロウ(演出家)

12月6日
庭劇団ペニノ「太陽と下着の見える街」
ポストパフォーマンス・トーク(演出家 タニノクロウ氏)

二階建ての舞台セットの上段に、演出家のタニノクロウさんが現れました。
「僕、友達がいないので、一人でポストパフォーマンス・トークしますが、最後まで楽しんでいただければ幸いです」
緊張した様子のタニノさんお一人による「太陽と下着の見える街」ポストパフォーマンス・トークが始まりました。
初日に頂いたご質問をまとめたものを使い、作品についてお話されました。

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Q.「今回の作品について、思いついたきっかけや、インスピレーションを得たものはありますか?」
タニノさん「僕自身も医者で、研修医の時に精神病院で見た風景が面白いと思ったことがきっかけです。そこに住んでいる人たちは、それぞれが支離滅裂な妄想を話し続けていて、その様を作品にしたいと、ずいぶん昔から思っていました。彼らの言葉は面白くてセリフの参考にもなったし、彼らの話す断片的なエピソードを、繋がっているようで繋がってない台本にしていきました。」

Q.「沢山のエピソードで、演出上削ったものはありましたか?」
タニノさん「前作は思いついたものを詰め込んだから、お金もそれなりにかかったんですね。だけど今回はそういったものができなくて。それとセットは本当に最近決まって、それまでは部屋の展開図のような、檻のようなものを考えていました。そこから変更したので、それで削ったエピソードもありました。」

Q.「役者さんにはどんな演出をしましたか?」
タニノさん「毎回『何か変えたい』と思ってやっているので、前回とは違います。方法論で作っているわけでもないし、毎回『壊して新しいものを作りたい』と考えています。
というか、よく分かんないですよね?この作品(笑)妄想を固めていって、特別主役がいるわけでもない...」

Q.「なぜ『パンチラ』なの?」
タニノさん「分断されたエピソードを、さらに分断したかったのです。羅列されたエピソードが、パンチラによってより分断されることで、エピソードの印象も変わると思います。パンチラが気になってセリフが頭に入らない方もいらっしゃったかと思います(笑)僕も演出していてそうでした」

ここで質疑応答のコーナー

Q.「登場人物の中で一番『まとも』に見える女性も、妄想患者なんですか?」
タニノさん「そうですね。この作品は精神病院を揶揄してもいるので...。(舞台の)上に居る4人は、医師と看護士というか、下の人々を管理しているという体なのですが、彼らも下の人たちと変わりない、人間は変わりないんだよということを提示しました。」

Q.「次回作の構想はありますか?」
タニノさん「特に決まってないですね...前作の新作になるかもしれませんけど、また思いつきで作るかもしれません...具体的に温めているアイデアはありません。」

ここで質疑応答が終了。

タニノさん「せっかく残って頂いたのに、グダグダして、申し訳ありません...ありがとうございました!」

こうしてポストパフォーマンス・トークは終了しました。

『繋がっているようで繋がらない断片的なエピソード』というタニノさんのお言葉は、全体の調和を重要視する、いわゆる「お芝居」とは一線を画し、たった一人の個人にフォーカスを当てたタニノさんの作品そのものを表しているようでした。
ひとりひとりの物語が重なり合うことで生まれる新たな調和が生まれ、新たな演劇のシンフォニーが奏でられるのかもしれません。

と、まじめに考えてみたところで、その思考も『パンチラ』ひとつに粉砕される...。
人間なんて、そんなものなのかもしれませんね。

広報クルーT