『あの人の世界』(サンプル)
ポスト・パフォーマンストーク
11月6日 金曜日 東京芸術劇場小ホール1にて
松井周×松本雄吉(維新派、演出家)
今回の舞台の特色の1つである、斜めに傾いたステージ上でパフォーマンストークが行われました。松井さんたっての希望で決定したトークゲストは、先日のにしすがも創造舎で上演された舞台『ろじ式』を演出した維新派の松本雄吉さん。この日は『あの人の世界』舞台初日であり、世界初演でもありました。
まずは舞台を見終えた松本さんの感想から。
"現代演劇"という言葉が頭の中に浮かんだとのこと。
「成り立ちにくいシュールさが演出と俳優によってうまく表現されていて、「虚構性」が伝わってきた」と松本さんはおっしゃっていました。
さらにトークが進んでいく中で、松井さんの舞台のキーワードがこの「虚構性」であることが明らかに。
松井さんは以前、宝塚劇場で働いていたことがあるそうですが、そのとき感じた宝塚の「虚構性」(羽をつける、女性が男性を演じるなど)。そこに目をつけ、自分の作品でも虚構性を意識したものをあえてやりたい!と思うようになったそうです。
さらに2人の考える身体論、舞台における空間のことまで話は進んでいきます。
松井さんから松本さんへの問い「維新派の稽古はどのように行っているのか。」に対して
「空間の中で身体で覚えるんだ」と松本さん。
「空間があって、それに合わせて身体の動きがつくられていく」とのこと。
特に野外の場合はそれが顕著で、まずは環境(風の動き、太陽の向きなど)に合わせていくそうです。
野外など、広く空間をとらえる松本さんに対して、「劇場の窮屈さ、演じていても箱の中でしかないという切実さ、切なさ・・・そういったものを表現したかった」、と松井さん。
2人の異なる世代の演劇観を垣間見ることができたと思います。
また松本さんが舞台を見るときに大事にしてるのが「質感」。
今回の舞台は「淡い」と感じたそう。
松本さん曰く「ステージ上に張り巡らされた布により、役者さんたちが動くたびに生じる独特の踏み音や布擦れ音が生まれ、床の音が淡い踏み音であったから。また役者と役者との間に成立する微妙な間が多く,舞台全体がゆるく成立している。」とのこと。
「このオブラートにつつまれたような淡さが、松井さんたち世代の持つ質感なのでは。」とも松本さんはおっしゃっていました。
そして舞台美術の話に。
高いステージがあり、その下には斜めに傾いた三角形の舞台が組み合わさっています。
「俳優がどの位置に居て、どういう体になるとおもしろいのかなどを考え、斜めに傾けた三角形のステージや上から見下ろす、落ちてくるなどの効果を生み出す高さを設けた」と松井さんがおっしゃる今回の舞台美術は、やはり構想に時間がかかったそうです。
松本さんも、この特殊な舞台美術によって見えてくる縦の構図に感嘆していました。
松井さんと松本さんの異なる世代の演劇観まで聞くことが出来た今回のポストトーク。時間があっという間に感じられたぐらいとても濃い内容でした。
広報クルー M